事例

借りた場所での活動から、自分たちの拠点と事業を持つまで

クライアント
NPO法人琵琶湖ローイングCLUB
分類
NPO・非営利団体
実施したこと
価値提案の言語化、ポジショニング整理、事業計画整理、補助金申請
該当する課題
  • 技術やサービスの強みを、顧客価値として説明できていない
  • 補助金や研究は進んでいるが、売上につながっていない
  • 少人数で手が回らず、専門領域を任せられる人がいない

01

状況どの段階で、何に困っていたか

障害のある方がローイング(ボート競技)に取り組めるよう支援してきた団体です。活動そのものは続いていましたが、自分たちの拠点を持っていませんでした。

近隣の漕艇場を使い、艇を借りて活動する形です。活動は成立しますが、できることは借りられる範囲に限られます。日程も、置ける道具も、受け入れられる人数も、自分たちでは決められません。

やがて「自分たちの拠点を持ちたい」という考えが出てきます。ただし拠点整備は、これまで担ってきた活動運営とは種類の違う仕事でした。少人数で日々の活動を回しながら、資金調達と施設整備を同時に進める必要があります。

該当する課題は「技術やサービスの強みを、顧客価値として説明できていない」「補助金や研究は進んでいるが、売上につながっていない」「少人数で手が回らず、専門領域を任せられる人がいない」でした。

02

逆算目的から考えたとき、何がボトルネックだったか

目的は、活動を続けられる場所を自分たちで持つことでした。

そこから逆算したとき、必要なのは物件を探すことでも、寄付を集めることでもありませんでした。「この活動に場所を与えることが、誰にとっての利益になるのか」を、支援する側の言葉で示せることです。

拠点整備には、自力では届かない規模の資金が要ります。その資金を出す側には、それぞれ固有の目的があります。したがって、自分たちの願いをそのまま訴えるのではなく、相手の目的と自分たちの活動が重なる点を見つける必要がありました。

ここで先に着手したのが、地域からの受け入れです。地域の中でイベントを開催し、活動を知ってもらい、「この団体がこの場所にいることは自然だ」と受け止められる状態をつくっていきました。**拠点は建てる前に、まず地域の中に居場所をつくる。**この順序が後の資金調達の前提になります。

03

実施HILUCOが実際に何をしたか

活動の位置づけを、支援制度の文脈に翻訳する — 日本財団の「渚の交番プロジェクト」に応募しました。

この事業は海の安全を守るための拠点整備を主なテーマとしています。一見すると、湖で活動する団体は対象から外れて見えます。しかし、琵琶湖は水域として大きな規模を持ち、この団体が行うスポーツは水そのものが前提です。加えて、日本財団は障害者支援に力を入れています。

制度の主題と、自分たちの活動の重なりがどこにあるのかを見極めたことが、この応募の要点でした。 「海の事業だから湖は対象外」と読むのか、「水辺の拠点整備と障害者支援という二つの軸で重なる」と読むのか。ここの判断が結果を分けています。

地域での認知づくり — 応募に先立って、地域内でのイベント開催などを重ねてきました。実績と関係が先にあることで、拠点構想の説得力が変わります。

拠点の事業設計 — 採択後、拠点を「活動場所」で終わらせず、事業として成立する形に設計しました。

04

変化何がどう変わったか

瀬田の唐橋に拠点「KARAHASHI.DECK」が生まれました。

借りた場所で活動する団体から、自分たちの場所を持ち、そこで複数の事業を運営する団体になっています。現在はカフェ、水上スポーツ体験、就労継続支援B型事業所の運営を行っています。

構造として重要なのは、拠点が支出ではなく収益源になっている点です。カフェと体験事業が収入を生み、就労継続支援B型事業所は障害のある方の働く場になります。もともとの目的である「障害のある方が水上スポーツに取り組める環境」が、事業の副産物ではなく、事業そのものの中に組み込まれました。

助成金は施設をつくって終わりではなく、その後も回り続ける事業の起点になっています。

確認できた変化

  • 日本財団「渚の交番プロジェクト」の対象として採択
  • 瀬田の唐橋に拠点「KARAHASHI.DECK」を開設
  • カフェ・水上スポーツ体験・就労継続支援B型事業所を運営する事業体制へ

Learning

助成金や補助金の公募要領は、たいてい自分たちの活動とそのままの形では一致しない。「対象外だ」と判断して応募しない団体は多い。

しかし制度には主題があり、その主題は複数の軸を持っている。この事例では「水辺の拠点整備」と「障害者支援」という二つの軸が交わる位置に、自分たちの活動があった。制度を読むとは、要件を確認することではなく、制度の目的と自分たちの目的が重なる場所を探すことである。

もうひとつ。拠点や設備を得ることを目的にすると、獲得した時点で計画が終わる。この事例では拠点が事業を生む構造になっていたため、資金が入った後も動き続けている。何を手に入れるかではなく、手に入れた後に何が回り始めるかで設計する。

参考

お問い合わせは hiluco.jp のフォームにまとめています。

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