手法

公募要領は、要件表ではなく主題として読む

「うちは対象外だ」と読んだところで、多くの応募が止まっている。

要件に自分を当てはめると、たいてい外れる

補助金や助成金の公募要領を開いて、対象事業の欄を読み、「うちは違う」と閉じる。ここで止まっている応募は多いです。

要領を要件の一覧として読むと、この判断になります。自分たちの活動を要件に照らし、合っていれば応募し、合わなければ諦める。しかし制度の側は、要件を満たす相手を探しているわけではありません。その制度が達成したい主題があり、それに寄与する相手を探しています。

読むべきは、要件ではなく主題です。

主題は、たいてい複数の軸を持つ

制度の主題は、一つの言葉で書かれていても、中身は複数の軸でできています。

「水辺の拠点整備」という主題を、軸に分ける
制度が達成したいこと
  • 水域の安全と活用 水辺に人が関わる場をつくる
  • 地域との関係 その場所が地域に根づいているか
  • 社会的な包摂 誰が使えるようになるのか
  • 継続する運営 整備した後も回り続けるか

軸に分けると、自分たちの活動と重なる位置が見えてきます。一つの軸では重ならなくても、別の軸では重なることがあります。

ローイングの事例がこれにあたります。応募先は海の安全を主なテーマとする助成事業でした。湖で活動する団体は、対象事業の記述だけを読めば外れて見えます。しかし琵琶湖は水域として大きな規模を持ち、この団体が行うスポーツは水そのものが前提です。加えて、助成する側は障害者支援にも力を入れていました。

「海の事業だから湖は対象外」と読むのか、「水辺の拠点整備と障害者支援という二つの軸で重なる」と読むのか。 ここの判断が結果を分けています。

こじつけと、重なりは違う

ただし、重なりを探すことと、無理に寄せることは別です。

制度の言葉に合わせて活動の説明を作り替え、採択されたとします。そのあと待っているのは、書いたとおりに実行する義務です。もともとやるつもりのなかったことを書いていれば、報告のたびに苦しくなります。実態と合わない計画は、採択された時点から負債になります。

見分け方は単純です。採択されなくても、それをやるつもりがあるか。 あるなら重なりです。ないならこじつけです。

重ならないなら、その公募には応募しません。次の公募を待つか、別の資金を探すほうが早く着きます。

書くのは、翻訳であって作文ではない

重なる位置が見つかったら、その位置から計画を書きます。

採択される計画は「補助金のために書かれた計画」ではありません。事業として成立する計画を、公募要領の言葉に翻訳したものです。順序が逆になっていると、採択された瞬間から計画と実態がずれていきます。

応募までの順序
  1. 制度の主題を読む 何を達成したい制度なのか
  2. 軸に分ける 主題は一つではない
  3. 自分たちの軸と並べる どこで重なるか
  4. 重なる位置から書く 事業計画を要領の言葉に置き換える

認知機能測定の事例でも、先に事業計画があり、それを公募要領の言葉に置き換える形をとりました。研究開発計画と事業計画が一つにまとまっていたため、翻訳するだけで済んでいます。

採択は、途中の一点でしかない

もうひとつ。採択された時点で計画が終わる書き方をしないことです。

設備や拠点を手に入れることを目的にすると、手に入れた瞬間に計画は目的を失います。ローイングの事例で拠点がその後も動いているのは、拠点を活動場所ではなく、収益を生む事業として設計していたからです。カフェと体験事業が収入を生み、就労継続支援の事業所が働く場になっています。

何を手に入れるかではなく、手に入れた後に何が回り始めるかで書く。 審査する側が見ているのも、そこです。

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