手法

研究の時間軸を、事業の時間軸につなぐ

研究は中長期の成長のために回す。今期の売上は、別のルートで確保しておく。

三つの時間軸が、同じチームの中で動いている

売上は今月・今四半期で評価されます。補助金や助成金は年度や公募の単位で動きます。研究は数年かけて成果を出します。

数人のチームでは、この三つを同じ人たちが同時に回すことになります。速さの違うものを並行して持つこと自体は避けられません。問題が起きるのは、三つが別々の計画として存在しているときです。

成果が出るまでの長さが違う
  1. 売上 今月・今四半期
  2. 補助金・助成金 年度・公募単位
  3. 研究 数年

このとき研究は、経営の側から見ると「将来のためのコスト」に見え続けます。今期の数字に何も足さないためです。そして数字が苦しくなった年に、まっ先に止まります。

研究に、今期の売上を背負わせない

ここで起きやすい失敗が二つあります。

ひとつは、研究を止めてしまうことです。短期の数字を優先し、数年かけて積むはずだったものが毎年リセットされる。結果として、数年後も同じ場所にいることになります。

もうひとつは逆で、研究が終わるまで売上が立たない構造にしてしまうことです。「この検証が終われば売れるようになる」と考えて、そこに事業の期待をすべて乗せる。しかし研究は予定どおりには進みません。現場の都合で対象者が集まらない、想定した差が出ない、解析に時間がかかる。そのたびに事業が止まります。

研究は中長期の成長のために回すものです。今期の売上は、研究とは別のルートで確保しておきます。 既存製品の販売、受託、現場での運用支援など、いま現金を生む手段を並行して持っておく。この二本立てにしておくと、研究を急がせずに済みます。そして急がせない研究のほうが、結果的に使える根拠になります。

短期のルート 中長期のルート
目的 現金を回す 次の柱をつくる
判断の基準 今期に立つかどうか 数年後に何が言えるか
止めたときに起きること 事業が止まる 数年後がなくなる

どちらか一方しか持っていないチームは、どちらの理由でも行き詰まります。

研究の成果を、どの判断に使うかを先に決める

二本立てにしたうえで、二つをつなぐのは「使い道」です。

研究の成果が、いつ、どの意思決定に使われるのか。これを研究を始める前に決めておきます。決めていないと、論文にはなったが営業では使えない、という状態が生まれます。

認知機能測定の事例では、大学との共同研究のテーマを設定する段階で、論文のためだけでなく、企業向けの提案と資金調達の双方で使えることを条件に置きました。その結果、同じ研究から得た根拠が、企業への説明材料としても、補助金申請の裏づけとしても働いています。

使い道から、研究を設計する
  1. どの判断に使うかを決める 営業、資金調達、行政提案
  2. いつ必要になるかを置く 逆算して開始時期が決まる
  3. 研究テーマを設計する 使える形になる条件を入れる
  4. 計画を一つにまとめる 研究計画と事業計画を分けて書かない

年度に合わせるのではなく、年度を使う

補助金・助成金は、こちらの都合とは無関係に、年度と公募のスケジュールで動きます。これは制約ですが、逆算の起点にもなります。

いつ公募があり、いつ採択が決まり、いつ資金が入るのか。この日程を先に置くと、それまでに何を示せている必要があるかが決まります。研究のどの段階までを、どの公募に間に合わせるのか。 この対応がついていれば、年度のスケジュールは邪魔ではなく、計画の骨組みになります。

研究計画と事業計画を別々の文書として書かないのは、このためです。

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