手法

同じ製品でも、届け方は一つではない

売れないのは中身のせいではなく、買い方が一つしかないせいかもしれない。

製品を直す前に、届け方を疑う

売れないと分かったとき、多くのチームは製品に手を入れようとします。機能を足す、精度を上げる、価格を下げる。

しかし製品そのものは変えずに、届け方を変えるだけで売れ始めることがあります。買う側が断る理由は、中身ではなく買い方のほうにあることが少なくないからです。

一度に払う金額が大きすぎる。導入の決裁が重すぎる。効果が出るか分からないものに初期費用は出せない。これらはどれも、製品の性能とは関係のない理由です。中身を良くしても、この種の理由は消えません。

届け方には、いくつもの形がある

同じ製品でも、次のような形が考えられます。

届け方 買う側から見たときの違い
買い切り 一度の負担は大きいが、その後の費用は読める
リース・レンタル 初期費用を抑えられる。合わなければやめられる
月額・年額 予算を平準化できる。決裁は通しやすいが、続ける理由が要る
他の製品・サービスとの組み合わせ 単体では買わない相手が、まとめてなら買う
導入支援や運用込み 製品ではなく業務が代わる。人手のない相手ほど効く

どれが正解かは、製品ではなく相手の事情で決まります。同じ製品を複数の形で並べて出せる状態にしておくことが、届け方の設計です。

誰が払うのかが変わると、事業ごと変わる

届け方の中でいちばん大きく効くのは、誰が費用を払うのかです。

個人向けに考えていた製品が、法人向けに転じることがあります。使う人は変わらないのに、払う人だけが変わる形です。個人が自分の財布から出すには高い金額でも、法人が福利厚生や業務改善の予算から出すなら通ることがあります。判断の基準も変わります。個人は「欲しいかどうか」で決め、法人は「説明がつくかどうか」で決めます。同じ製品を売るのに、必要な材料が変わるということです。

香りの事例では、一般消費者向けの香水を主力としてきたメーカーが、施設に置くディフューザーという法人向けの形を持ち、さらに介護施設に向けた嗅覚に働きかけるサービスへ移りつつあります。扱っている素材は一貫して香りですが、誰が払い、何に対して払うのかは、その都度つくり直されています。

払う人を増やす形もあります。認知機能測定の事例では、補助事業に採択されたことで、開発側に資金が入るだけでなく、導入する企業側にも費用補助が及ぶ構造ができました。売り手と買い手の双方に、いま導入する理由が生まれています。費用の出どころを変えることも、届け方の一部です。

届け方も、検証の対象にする

届け方は、机の上で選ぶものではありません。製品と同じように、試して確かめます。

届け方を確かめる
  1. 形をいくつか並べる 買い切り、リース、組み合わせ
  2. 断られた理由を集める 中身か、買い方か
  3. 形を変えて出し直す 製品は変えない
  4. 続くかどうかを見る 一度きりで終わらない形はどれか

見るのは、売れたかどうかだけではありません。同じ形でもう一度売れるかです。一度きり成立した売り方は、たまたま条件が合っただけかもしれません。二度目、三度目が同じ形で成立して初めて、届け方が決まったと言えます。

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